【超入門】電気設計って何を設計するの?仕事の全体像をサクッと解説

公開日: 2025年10月12日

📝 目次 (Table of Contents)

「電気設計」と聞くと、難しい数式や複雑な配線図を思い浮かべませんか?

実は、私たちが普段使っている家電, 自動販売機、そして工場で動くロボット まで、すべての動きの裏側には「電気設計」の仕事が隠れています。

この記事では、数式は一切使わず、「電気設計って結局何を設計しているの?」という疑問に答えます。

読み終わる頃には、あなたも身近なものの裏側にある**「電気の司令塔」**の仕組みが理解できるようになります。

1. 電気設計とは?「電気の司令塔」を作る仕事

1-1. 電気設計の役割をざっくり解説

電気設計とは、**「電気を使って機器やシステムを安全かつ効率的に動かすための設計図」**を作ること。

重要な2つの要素:

  1. 電力供給(Power): 必要な電気を、必要な場所に、安全に送る設計。
  2. 制御(Control): 機器を「いつ」「どのように」動かすか、頭脳となる部分の設計。

1-2. 大きく2つに分けられる電気設計のフィールド

ここで、主な電気設計の分類とその具体的な対象を解説します。

分野

対象物

設計の核となるもの

ざっくりとしたイメージ

A. 電気設備設計

ビル、病院、学校、住宅などの建物全般

照明、コンセント、変電設備、幹線(太い配線)

電気のインフラを整える仕事。

B. 制御設計 (電気制御設計)

FA(工場自動化)機器、産業機械、ロボット、家電、自動車。

制御盤、PLC(頭脳となる機器)、センサー、モーター

機械の動きをプログラムし、配線する仕事。

2. 【図面が主役】電気設計者が作る3つの主要な図面

電気設計の成果物は「設計図」です。ここでは、主要な3種類の図面を、それぞれの役割とともに解説します。

2-1. ① 配線図・単線結線図(電気の通り道を示す地図)

  • 役割: どこから電気が来て、どこに分配されるかを**鳥瞰的(全体的)**に示す。
  • 単線結線図(幹線図): 電柱から受電設備、分電盤を経て、各フロアに電気がどのように流れるかを、1本の線で表現したもの(シンプルさが特徴)。

  • 実務でのポイント: 必要な電力量(負荷容量)を計算し、電線を安全な太さで選定する。

2-2. ② 機器配置図(部品のレイアウト図)

  • 役割: 「何をどこに置くか」を決める図面。
    • 設備設計: 建物内の照明器具、コンセント、スイッチの配置。
    • 制御設計: 制御盤内の部品(PLC、リレー、端子台など) の配置と、機器を固定するための加工図。
  • 実務でのポイント: メンテナンス性、熱対策、作業のしやすさなどを考慮したレイアウトが重要。

2-3. ③ シーケンス図・展開接続図(機器を動かす命令書)

  • 役割: 「いつ、どの部品を動かすか」という論理(ロジック)を示す図面。制御設計の中心となる図面。
  • シーケンス図(ラダー図): はしご(ラダー)のような形をした図で、左から右へ電気が流れるイメージでロジックを表現。
    • : 「スタートボタンが押されて(条件)」「モーターを動かし(動作)」「10秒後に止まる(タイマー)」といった動きを図で表現する。
  • 実務でのポイント: この図面をもとに、プログラミング(PLC)が行われるため、曖昧さのない明確なロジックが求められる。


3. 電気設計者の仕事の流れ(プロジェクト全体像)

設計者が普段どのように仕事を進めているか、一般的なプロセスを解説します。

3-1. STEP 1: 要件定義・仕様決定(設計のゴールを決める)

  • 仕事の核: お客様(依頼主)が「何をしたいか」をヒアリングし、文書化する。
  • 重要ポイント: 「照明をつけたい」ではなく、「この部屋で500ルクス以上の明るさが欲しい」など、定量的かつ具体的な仕様に落とし込む作業が最も重要。
  • 確認事項: 予算、納期、設置環境、使用する電源電圧、国の安全規格(JIS、CE、ULなど)。

3-2. STEP 2: 基本設計(骨組みを作る)

  • 仕事の核: 要件定義に基づいて、システムの骨格を決定する。
  • 設備設計: 幹線容量の計算、変圧器の容量決定、分電盤の構成決定。
  • 制御設計: どのメーカーのPLCを使うか、必要なセンサーやモーターの選定。

3-3. STEP 3: 詳細設計(図面を作成する)

  • 仕事の核: CADソフト を使い、実際に製造や工事に必要なすべての図面を作成する。
  • 作業: 前述した「配線図」「機器配置図」「シーケンス図」などを具体的に作成。部品表(BOM)も同時に作成する。
  • 重要ポイント: 誰が見ても間違わないよう、図面ルールや記号を統一する。

3-4. STEP 4: 現場での立ち会い・調整(設計の最終確認)

  • 仕事の核: 設計図をもとに作られた設備や機械が、設計通りに動くかをチェックする。
  • 制御設計: プログラムのデバッグ(間違い探し)や、センサーが意図通りに反応するかを調整する。
  • 設備設計: 実際に電気が流れるか、スイッチと照明の連携は正しいかを確認する。

4. 電気設計に必須の「3つの知識」

数式よりも重要な、設計者が常に意識すべき知識を3つに絞って解説します。

4-1. ① 安全規格と法規(ルールを知る)

  • なぜ必要?: 電気は使い方を間違えると感電火災 に直結するため、設計者は常に安全性を最優先しなければならない。
  • 具体例:
    • 内線規程: 日本国内で配線工事を行うための技術的なルール。
    • JIS、IEC: 部品や図面の表記方法の国際規格。
    • IP規格: 機器の防塵・防水性能を示すルール。設置場所に応じて最適なIP等級を選ぶ必要がある。

4-2. ② 熱とノイズ対策(快適な環境を作る)

  • 熱対策: 制御盤内の機器は動作中に熱を発生させる。温度が上がりすぎると故障の原因となるため、盤の換気扇やクーラー の選定・配置も重要な設計要素。
  • ノイズ対策: 近くを通る他の配線やモーターから発生するノイズ(雑音)が、信号線に悪影響を与え、誤作動を引き起こす。ノイズの影響を避けるためのシールド線や**接地(アース)**の設計が必須。

4-3. ③ 部品選定(プロとしての目利き)

  • 仕事の核: 膨大な種類があるリレー、ブレーカー、PLCなどの部品の中から、仕様を満たし、かつコスト、納期、将来性のバランスが最も良いものを選ぶ。
  • 具体的な考慮点:
    • その部品は長期供給されるか?
    • 価格は適正か?
    • 故障率は低いか?(信頼性)

5. まとめ:電気設計は「未来の動き」を形にする仕事

5-1. 電気設計者のやりがい

  • 設計図が形になり、機械や建物が初めて動いた瞬間は格別。
  • 自分の設計が、工場の生産性向上やビルの省エネルギー化に貢献する。

5-2. 次の一歩を踏み出そう!

  • 電気設計の基礎は、「オームの法則」と「ロジック(論理)」です。
  • まずは、身近な電化製品の取扱説明書や、簡単な電気工事士のテキストから「電気の通り道」をイメージする訓練を始めましょう。
  • この記事で紹介した「要件定義 → 基本設計 → 詳細設計」の流れを意識しながら勉強すれば、必ずプロの設計者への道が開けます!