【制御の基本】無電圧接点とは?その意味と仕組みを徹底解説!
公開日: 2025年10月19日
📝 目次 (Table of Contents)
電気設計や制御盤の図面を見ると、「無電圧接点」という言葉が頻繁に出てきます。一見難しそうですが、これは制御システムにおける情報伝達の基本であり、安全かつ汎用性の高い設計をする上で非常に重要です。
この記事では、電気設計初心者の方に向けて、無電圧接点の意味、なぜそれが必要なのかという理屈を分かりやすく解説します。
1. 無電圧接点とは?その意味と対義語
1-1. 無電圧接点の定義
無電圧接点(むでんあつせってん)とは、**「接点の両端に電源電圧がかかっていない状態」**で情報を伝えるための接点のことです。
簡単に言えば、「単なるON/OFF(導通/非導通)の情報だけを伝えるスイッチ」のことだと理解してください。
リレーやセンサーなどの接点がONになっても、その接点自体からは電圧が出力されません。外部から接続された回路に流れる電流を、その接点が**「導通させるか」「遮断するか」**という役割だけを果たします。
1-2. 「有電圧接点」との違い
無電圧接点を理解するためには、その対義語である「有電圧接点」と比較すると明確です。
項目 | 無電圧接点 (ドライ接点) | 有電圧接点 (ウェット接点) |
|---|---|---|
出力されるもの | ON/OFFの情報 (単なる導通) | ON/OFFの情報 + 電源電圧 |
接点両端 | 電圧がかかっていない | 常に電源電圧がかかっている |
用途 | 異なる電圧の機器間の信号伝達 | 同じ電源電圧の機器間の信号伝達 |
例 | リレー接点、押しボタンスイッチ | PLCのトランジスタ出力(電源内蔵型) |
【イメージ】
- 無電圧接点: 「スイッチがONになった」という事実だけを紙に書いて渡すメッセンジャー。
- 有電圧接点: 「スイッチがONになった」という事実と共に、電源コードを一緒に渡すメッセンジャー。
2. なぜ無電圧接点が必要なのか?理屈を解説
制御システムにおいて、無電圧接点が好まれるのは、以下の2つの大きなメリットがあるからです。
2-1. 理由①:異なる電圧の機器を安全に接続できる(汎用性の高さ)
これが無電圧接点の最大のメリットです。
工場やビルには、制御盤の内部は DC24V で動いているのに、外部のセンサーは AC100V で動作している、といった異なる電圧の機器が混在することがよくあります。
もし、DC24Vの機器がAC100Vの「有電圧接点」に接続されたら、DC24Vの機器は過電圧で壊れてしまいます。
しかし、無電圧接点であれば、接点自体は電圧を持っていません。 したがって、その接点に、
- DC24Vの電源を通しても、
- AC100Vの電源を通しても、
- DC5Vの電源を通しても、
接点は単に「繋ぐか、繋がないか」の機能しか果たさないため、受け側の機器の電源に合わせて自由に使用できるのです。
2-2. 理由②:機器と回路の分離(ノイズ・保護の容易さ)
無電圧接点を使用すると、信号の送り手(リレーやセンサー)と、信号の受け手(PLCの入力部など)の回路が電気的に分離されます。
- ノイズ対策: 受け手側の回路は、接点から流れてくるノイズを最小限に抑えることができ、安定した制御が可能になります。
- 機器の保護: 信号の送り手側が故障しても、電源ラインが分離されているため、受け手側のPLCなどの高価な制御機器を過電圧やショートから守る クッション材としても機能します。
3. 無電圧接点の具体的な使い方と設計例
無電圧接点は、主に「外部からの信号をPLCなどの制御機器に取り込む」際に利用されます。
3-1. 現場の「押しボタンスイッチ」
工場現場にあるスタートボタンや停止ボタンは、一般的に無電圧接点です。
- 動作: 作業者がボタンを押す $\rightarrow$ 接点がONになる $\rightarrow$ PLCの入力端子と共通端子(COM)が導通する。
- 理屈: スイッチ自体はただの接点なので、PLCの入力モジュール側で用意したDC24Vなどの電源を利用して、「ONになった」という情報をPLCに取り込みます。このため、汎用的なスイッチが使えるのです。
3-2. PLCの「リレー出力」
PLCから外部の機器を制御する際、リレー出力モジュールを使用すれば、その出力は無電圧接点になります。
- 動作: PLCのプログラムがON $\rightarrow$ モジュール内部のリレーが動作 $\rightarrow$ 接点がONになる。
- 理屈: この無電圧接点を利用して、AC100Vのランプを点灯させたり、DC12Vの電磁弁を動かしたりと、PLCの内部電源電圧とは異なる電源を自由にON/OFFできます。
3-3. センサーやリミットスイッチ
センサーやリミットスイッチ(機械の終端を検知するスイッチ)も、単に接点のON/OFFを出力するタイプは無電圧接点として扱われます。
- メリット: センサーの電源はAC100Vだが、出力信号はDC24Vで受けたい、という場合に、無電圧接点タイプを選べば安全に接続できます。
4. まとめ:無電圧接点は「安全と汎用性の要」
無電圧接点とは、電圧を持たないON/OFFの情報を伝えるためのスイッチです。
この仕組みのおかげで、私たちは:
- 異なる電圧の機器を安全に接続できる。
- ノイズの影響を小さくし、高価な制御機器を保護できる。
電気設計においては、この「無電圧接点」を意識することで、より安全で汎用性の高い、誰にでもわかりやすい回路設計が可能になります。制御設計の基本として、ぜひ覚えておきましょう。