モーターのブレーカー・電線・電磁接触器・サーマルリレーの選定方法
公開日: 2026年10月27日
📝 目次 (Table of Contents)
モーター容量別のブレーカー・電線・電磁接触器・サーマルリレーの選定方法
三相誘導モーターを使用する生産設備では、モーターの容量や始動方式に応じて、ブレーカー、電線、電磁接触器、サーマルリレーなどを適切に選定する必要があります。
しかし、モーターの始動方式には直入れ始動、スターデルタ始動、コンドルファ始動、インバータ制御など複数の種類があり、それぞれ始動電流や必要な機器構成が異なり、ブレーカーの選定基準や電線の考え方、電磁接触器の設置位置、モーターの過負荷保護方法などに違いがあります。
この記事では、モーターの始動方式の種類と特徴を紹介したうえで、使用頻度の高い直入れ始動とインバータ制御を中心に、モーター容量別の定格電流の目安と各機器の選定方法を解説します。
※本記事は一般的な三相誘導モーターを対象としています。記載する電流値は概算であり、実際の機器選定ではモーターの銘板、メーカーの技術資料、適用される法令・規程を確認してください。
1. 始動の種類
三相誘導モーターの始動方式には、複数の種類があります。
始動方式によって、始動電流、始動トルク、回路構成、必要な機器が異なります。設備の負荷特性や必要な始動性能に応じて選定することが重要です。
1-1. 直入れ始動
直入れ始動は、電磁接触器などを使用して、モーターを電源に直接接続する始動方式です。
回路構成がシンプルで、設備コストを抑えやすいため、一般的な生産設備で広く使用されています。
メリット
- 回路構成がシンプル
- 必要な機器が比較的少ない
- 設計や保守が比較的容易
- モーターの始動トルクを確保しやすい
デメリット
- 始動時に大きな電流が流れる
- 電源電圧が一時的に低下する場合がある
- 負荷によっては機械的な衝撃が大きくなる
始動時には、モーターの定格電流を大きく上回る電流が流れます。そのため、ブレーカーの不要動作や電源設備への影響を考慮して設計する必要があります。
1-2. コンドルファ始動
コンドルファ始動は、単巻変圧器を使用して始動時のモーター印加電圧を下げる方式です。
始動時の電圧を下げることで、電源側に流れる始動電流を抑制します。主に、直入れ始動では始動電流が大きすぎる場合や、大容量モーターを始動する場合などに使用されます。
メリット
- 電源側の始動電流を抑えられる
- 始動時の電圧降下を軽減できる
- タップなどによって始動条件を選択できる方式がある
デメリット
- 単巻変圧器などが必要となり、設備が大型化しやすい
- 回路構成が複雑になる
- 始動時の電圧を下げるため、モーターの始動トルクも低下する
始動トルクは、電圧を下げると概ね電圧の2乗に比例して低下します。そのため、始動時に大きなトルクが必要な設備では注意が必要です。
1-3. スターデルタ始動
スターデルタ始動は、モーターの巻線を始動時にスター結線とし、始動後にデルタ結線へ切り替える方式です。
一般的な三相誘導モーターでは、デルタ結線で運転するモーターを対象とします。
スター結線で始動することで、直入れ始動と比較して電源側の始動電流を抑えられます。
メリット
- 直入れ始動より始動電流を抑えられる
- 単巻変圧器を使用しないため、コンドルファ始動より構成を簡素化できる場合がある
デメリット
- スター・デルタ切替用の電磁接触器などが必要
- モーターの端子構成や巻線電圧が適合している必要がある
- 始動トルクが直入れ始動より小さい
- 切替時に電流やトルクの変動が生じる場合がある
一般的なスターデルタ始動では、始動時の線電流は直入れ始動のおよそ3分の1、始動トルクもおよそ3分の1になります。負荷が重い設備では、始動できるかどうかを事前に確認する必要があります。
1-4. リアクトル始動
リアクトル始動は、電源とモーターの間にリアクトルを挿入し、始動時の印加電圧を下げる方式です。
始動電流を抑えられますが、印加電圧が下がるため、始動トルクも低下します。
コンドルファ始動やスターデルタ始動と同様に、始動電流の抑制が必要な設備で検討されます。
1-5. ソフトスタータによる始動
ソフトスタータは、半導体素子を使用してモーターへの印加電圧を制御し、始動時の電流や機械的な衝撃を抑える装置です。
インバータとは異なり、一般的には運転中の回転速度を連続的に変更することを主目的としていません。
ポンプやファンなど、始動・停止時の衝撃を抑えたい設備で使用されます。
1-6. インバータ制御
インバータ制御は、インバータを使用してモーターに供給する周波数や電圧を制御する方式です。
周波数を変えることで、モーターの回転速度を調整できます。
メリット
- モーターの回転速度を変更できる
- 加速・減速時間を設定できる
- 始動時の電流を抑えやすい
- 運転条件に合わせた速度制御ができる
- インバータの電子サーマル機能などを利用できる
デメリット
- インバータ本体の費用が必要
- 高調波や電磁ノイズへの対策が必要になる場合がある
- 低速運転ではモーターの冷却能力に注意が必要
- インバータの入力側・出力側で機器の選定基準が異なる
インバータは始動電流を抑えやすい方式ですが、負荷条件や加速時間によっては大きな電流が流れることもあります。
本記事で比較する始動方式
ここまで紹介したように、モーターの始動方式には複数の種類があります。
ただし、すべての始動方式を同じ深さで解説すると、機器選定の基準が分かりにくくなります。
そこで、この記事では、一般的な設備で使用される直入れ始動とインバータ制御を中心に比較し、ブレーカー、電線、電磁接触器、サーマルリレーの選定方法を解説します。
2. 始動方法別の比較表
始動方式ごとの違いを、電気設計で重要になる項目で比較します。
項目 | 直入れ始動 | コンドルファ始動 | スターデルタ始動 | インバータ制御 |
|---|---|---|---|---|
始動電流 | 大きい | 抑制できる | およそ直入れの1/3 | 条件に応じて抑制できる |
始動トルク | 大きい | 電圧設定に応じて低下 | およそ直入れの1/3 | 制御方式・条件による |
回転速度の変更 | 原則不可 | 原則不可 | 原則不可 | 可能 |
回路構成 | 簡単 | 複雑 | やや複雑 | インバータが必要 |
主な用途 | 一般的な駆動装置 | 大容量モーターなど | 始動電流を抑えたい設備 | 速度制御が必要な設備 |
※始動電流・始動トルクの比較は一般的な目安です。実際の値はモーター、負荷、始動条件によって変わります。
直入れ始動では、始動電流が大きいため、ブレーカーの動作特性や電源設備への影響を確認する必要があります。
一方、インバータ制御では、インバータの入力側と出力側で電流の意味が異なります。ブレーカーや電線を選定するときは、モーターの定格電流だけでなく、インバータの仕様を確認することが重要です。
3. モーター容量別の定格電流の目安
機器選定の基本となるのが、モーターの定格電流です。
以下は、三相200Vの一般的な4極誘導モーターを想定した概算値です。
モーター容量 | 定格電流の参考範囲 |
|---|---|
0.2kW | 約1~1.5A |
0.4kW | 約2~2.5A |
0.75kW | 約3~4A |
1.5kW | 約5~7A |
2.2kW | 約7~10A |
3.7kW | 約12~16A |
5.5kW | 約17~23A |
7.5kW | 約23~30A |
11kW | 約33~42A |
15kW | 約45~57A |
22kW | 約65~85A |
※上記は目安であり、メーカーやモーターの効率・力率などによって変わります。最終的には銘板またはメーカー仕様書の定格電流を使用してください。
直入れ始動の場合
直入れ始動では、モーターの定格電流に加え、始動時に流れる大きな電流を考慮します。
そのため、ブレーカーは定格電流だけで決定せず、始動電流と動作特性を確認します。
インバータ制御の場合
インバータ制御では、モーターの定格電流を確認するとともに、インバータの入力電流・出力電流を確認します。
入力側のブレーカーや電線はインバータの仕様を基準に検討し、出力側の電線はモーター電流やインバータの出力定格、配線条件などを踏まえて選定します。
4. 機器選定
ここからは、ブレーカー、電線、電磁接触器、サーマルリレーの選定方法を解説します。
4-1. ブレーカーの選定方法
ブレーカーは、短絡や過電流などから回路を保護するための機器です。
直入れ始動とインバータ制御では、選定時に確認する項目が異なります。
直入れ始動の場合
直入れ始動では、次の項目を確認して選定します。
- モーターの定格電流
- 始動電流と始動時間
- ブレーカーの定格電流と動作特性
- 電線の許容電流
- 短絡電流と遮断容量
- サーマルリレーなどとの保護協調
始動時の電流によってブレーカーが不要動作しないことを確認しつつ、電線や機器を適切に保護できる定格を選定します。
インバータ制御の場合
インバータ制御では、基本的にインバータの電源入力側に設置するブレーカーを選定します。
確認する項目は次のとおりです。
- インバータの入力電流
- インバータの容量と型式
- メーカーが指定するブレーカーやヒューズ
- 電線の許容電流
- 遮断容量と保護協調
インバータの入力電流は、モーターの出力電流と一致するとは限りません。そのため、モーター容量だけでブレーカーを決めることは避けてください。
また、インバータ出力側にブレーカーを設置する場合は、インバータメーカーが認める構成かどうかを確認します。
4-2. 電線サイズの選定方法
電線サイズは、電流だけでなく、配線方法や周囲温度、配線距離などを考慮して決定します。
直入れ始動の場合
直入れ始動では、モーターの定格電流を基準に、電線の許容電流や電圧降下を確認します。
主な確認項目は次のとおりです。
- 電線の許容電流
- 配線距離
- 周囲温度
- 金属管やケーブルラックなどの配線方法
- 同一管内に収容する電線の本数
- 始動時の電圧降下
配線距離が長い場合は、始動時の電圧降下が大きくなることがあります。必要に応じて電線サイズを大きくするなどの対策を検討します。
インバータ制御の場合
インバータ制御では、入力側と出力側を分けて電線サイズを選定します。
入力側電線
インバータに電源を供給するための電線です。
インバータの入力電流、メーカーの指定、電線の許容電流、配線条件などを確認します。
出力側電線
インバータからモーターに電力を供給するための電線です。
モーターの定格電流、インバータの出力定格、配線距離、周囲温度などを確認します。
また、インバータ出力ではノイズやサージ電圧への配慮が必要になる場合があります。特に配線距離が長い場合は、メーカーが指定する配線長や対策を確認してください。
入力側と出力側で同じ電線サイズを使用できる場合もありますが、必ず同じになるわけではありません。それぞれの条件に応じて選定します。
4-3. 電磁接触器の選定方法
電磁接触器は、モーターの運転・停止などを制御するための機器です。
直入れ始動の場合
直入れ始動では、電磁接触器によってモーターへの電源供給を開閉します。
一般的な三相かご形誘導モーターでは、AC-3使用カテゴリを基準に選定します。
確認する項目は次のとおりです。
- モーター容量
- 使用電圧
- 使用カテゴリ
- 開閉頻度
- 電気的耐久性
- コイル電圧
- サーマルリレーとの組み合わせ
モーターの定格電流だけで選定するのではなく、メーカーのモーター容量別選定表を確認します。
インバータ制御の場合
インバータ制御では、運転・停止をインバータの制御端子や通信機能で行うことが一般的です。そのため、インバータの出力側に電磁接触器を設置する必要は通常ありません。
ただし、保守や電源遮断などを目的として、インバータの入力側に電磁接触器を設置する場合があります。
入力側の電磁接触器を頻繁な運転・停止に使用することは避け、メーカーの指定する開閉頻度や再投入条件を守ります。
また、インバータの出力側に電磁接触器を設置する場合は、インバータの運転中に開閉しないようにするなど、適切な制御とインターロックが必要です。
4-4. サーマルリレーの選定方法
サーマルリレーは、モーターの過負荷を検出して保護するための機器です。
直入れ始動の場合
直入れ始動では、サーマルリレーの整定範囲がモーターの定格電流をカバーしていることを確認します。
例えば、モーターの定格電流が6.5Aの場合は、6.5Aを設定できる整定範囲の機種を選定します。
整定値は、メーカーの指示に従い、原則としてモーターの定格電流を基準に設定します。
始動時にサーマルリレーが動作する場合は、始動時間、負荷条件、始動頻度、機器の動作特性などを確認します。原因を調べずに設定電流を引き上げることは避けてください。
インバータ制御の場合
インバータ制御では、インバータに搭載された電子サーマル機能などを使用してモーターの過負荷保護を行う構成が一般的です。
電子サーマル機能を使用する場合は、モーターの定格電流や適用モーターの種類などを正しく設定します。
ただし、複数台のモーターを1台のインバータで駆動する場合などは、各モーターの個別保護を検討する必要があります。
外部のサーマルリレーを使用する場合は、インバータ出力の波形や誤動作の可能性、保護方式との適合性を確認してください。
5. 実際の設備設計で確認すること
実際の設備では、モーター容量だけでなく、運転条件や配線条件を考慮して機器を選定します。
以下の手順で確認すると、選定漏れを防ぎやすくなります。
- モーターの仕様を確認する。 容量、電圧、定格電流、極数、始動条件を確認します。
- 始動方式を決める。 直入れ始動かインバータ制御かを明確にします。
- ブレーカーを選定する。 直入れでは始動電流、インバータ制御では入力電流とメーカー指定を確認します。
- 電線サイズを決める。 許容電流、配線方法、周囲温度、配線距離、電圧降下を確認します。
- 電磁接触器を選定する。 使用カテゴリ、モーター容量、開閉頻度、制御方式を確認します。
- 過負荷保護を検討する。 直入れではサーマルリレーなど、インバータ制御では電子サーマル機能などを適切に組み合わせます。
- 保護協調を確認する。 短絡保護、過負荷保護、電線保護が適切に機能することを確認します。
- メーカー資料と適用規程を確認する。 選定表や取扱説明書を基に最終決定します。
特にインバータ制御では、インバータの入力側と出力側を混同しないことが重要です。
また、直入れ始動では始動電流によるブレーカーの不要動作、インバータ制御では電子サーマル機能の設定や配線条件など、方式ごとの注意点を把握しておきましょう。
6. まとめ
モーターの始動方式には、直入れ始動、コンドルファ始動、スターデルタ始動、リアクトル始動、ソフトスタータ、インバータ制御など、さまざまな種類があります。
その中でも、直入れ始動とインバータ制御では、ブレーカー、電線、電磁接触器、サーマルリレーの選定基準が大きく異なります。
直入れ始動では、モーターの始動電流を考慮してブレーカーを選定し、電磁接触器とサーマルリレーを適切に組み合わせます。
一方、インバータ制御では、インバータの入力電流・出力電流、入力側と出力側の電線、電子サーマル機能などを踏まえて設計する必要があります。
容量別の定格電流表は初期選定の参考になりますが、最終的な機器選定では、モーターの銘板、メーカーの選定表、配線条件、適用される法令・規程を必ず確認してください。
それぞれの始動方式と機器の役割を理解することで、安全性と信頼性を考慮したモーター回路の設計につながります。